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日本でネットライブの広告ビジネスは成功できるのか?海外の成功事例に学ぶライブ広告配信の未来

オンデマンドで定額課金制のサービスが主流の動画配信業界において、国内ではサイバーエージェントが、無料のインターネットテレビ、AbemaTVを立ち上げました。日本では、唯一とも言われるリニア動画で無料サービスという位置づけとなり、海外の名だたるOTTサービスと比較しても先進的な取り組みをしていると思います。

このインターネットライブ配信 x 広告というビジネスモデルはとても注目されており、国内でこういったビジネスが立ち上がってくることは、とてもワクワクしますね。

一方で、サイバーエージェントの藤田社長が決算発表でおっしゃっていた通り、このネット動画配信と広告モデルを確立させるというのにはそれなりにチャレンジがあるのだろうとも思います。

国内では前例がないチャレンジだけに、

無料ネット動画配信x広告配信で成功している会社は世界にあるのか?

日本でもネット無料テレビのビジネスモデルは立ち上がるのか?

という点について、おそらく多くの人々が疑問や意見を持ち、そして答えを探しているのではないでしょうか。

 

では皆さん、世界中でネットの無料ライブ配信+広告モデルで成功している例はあると思いますか?

アカマイの全世界中のスポーツライブ配信の事例から挙げるとすると、代表的な成功事例が2つあります。

 

一つは、日本でも認知度の高いスーパーボウル

もう一つは、意外に思われるかも知れないのですが、クリケットというスポーツが、成功している広告モデルとして、アカマイ社内だけではなく、世界中でも認知されています。

おそらくクリケットは日本ではそれほど認知度が高いスポーツではないため、クリケットと言うと疑問が沸いてしまうのではないでしょうか。

 

スーパーボウルについては後ほど紹介するとして、まずはクリケットが何故広告で成功しているのかについて解説したいと思います。
(正確には、クリケットはインストリーム広告だけで成功しているわけではありません。ライブストリーミングを通じて、インストリーム広告、スポンサリング、Premium Subscriptionへの誘導など、包括的なマネタイズ手法を活用して成功していると言われています。)

 

クリケット配信の最大手とも言われるのは、Star India系列のHotstarです。
国内ではあまり認知が高くないかも知れませんが、Hotstarは世界のストリーミングビジネスの中でも非常に先進的な取り組みをしています。

参考:Hotstar (Hotstarのアプリケーションのダウンロード数は約6,500万 と言われています。(2016年時点))

クリケットのライブ配信x広告挿入というモデルはHotstar以外にもあり、先日SonyLIVにてクリケットのライブ配信にDynamic Ad Insertionが利用されたというニュースをアカマイでもリリースしています。
参考リリースはこちら

 

では、まずクリケットというスポーツがいかにファンが多く、広告に向いているのか?というところから説明したいと思います。

 

クリケットは野球とハンドボールを組み合わせたような競技で、イギリスが発祥の地とされています。インドやパキスタン、南アフリカ、オーストラリアなど、イギリスの旧植民地ではラグビーやサッカーと並ぶ人気を誇るスポーツです。

競技人口はなんと1億5千万人とも言われます。(日本の人口より多いですね。。。)

 

こちらのSPAIAさんの記事にもありますが、野球の競技人口が4,000万人と言われているので、いかにその人気が高いかがわかりますね。

ちなみに世界で競技人口の多いスポーツランキングは以下の通り。(体を鍛えて健康LIFEを!さんから転載)

アカマイインドのSidharth Malikは、最近のライブストリーミング後に以下のようなコメントを発表しています。

 

「今年[2017年]のはじめに行われたインド対イングランドのシリーズに関連して、私達は、同時に300万以上の、合計で約2500万の、ユーザーに配信をしました。そして私達のネットワーク上でのトラフィックは毎秒3テラビット近くに達しました。」

 

ここでは、2017年初頭に行われたインド対イングランド戦での視聴者数 (同時接続数300万、合計2,500万) や、トラフィックの大きさについて言及されおり、その大きさはほぼ3Tbpsと書かれています。

3Tbps (3 terabits per second) というのはこのクリケットの試合から配信されたゲームのトラフィック≒パケットの量と思っていただければと思いますが、たぶん業界の方や詳しい方であれば、このトラフィックがいかに大きいか、というのはお分かりでしょう。

また3Tbpsという数字にピンと来なくても、300万同時接続 や 2,500万視聴者という数字であれば、もう少しその大きさが伝わりやすいのではないでしょうか。

 

そしてこのブログを書いているタイミングにてHotstarのライブストリーミングが、アカマイのストリーミングイベントでも史上最高のピークトラフィックを記録しました。2018年4月10日のChennai Super Kings vs Kolkata Knight Riders戦です。

その数値はなんと550万同時接続。クリケット 恐るべし。。。

https://www.prnewswire.com/news-releases/hotstar-and-akamai-set-global-streaming-record-during-vivo-ipl-2018-300628954.html

 

また更にこの記事を書いているときに、同時接続数の最大値が更新され、その数 826万人同時接続だそうです。

https://www.akamai.com/us/en/about/news/press/2018-press/hotstar-and-akamai-create-internet-history.jsp

 

では、なぜクリケットは無料ライブ動画+広告で成功できているのか?

 

以下は弊社のインドオフィスチームに聞いた生の声ですが、参考になると思いますので見てみましょう。

  • 試合時間が長い=広告挿入のタイミングがしっかり確保できる。
    クリケットは一試合がなんと4-8時間にも及ぶため、その間に視聴者に何回も広告挿入して表示するチャンスがある。たとえばボクシングだと、3分で終わってしまう可能性もあるので、比べるまでもなく、試合時間が非常に長いというのが広告に向いているポイント。
  • クリケットは英国、オーストラリア、米国などでも人気が高く視聴者が多いため、既に広告マーケットがホットで単価も高い国での視聴が期待できること。
  • 競技人口が多いスポーツのため、インストリーム広告以外にも、企業スポンサーがつきやすい。(例えばユニフォームの胸スポンサーなど)

繰り返しになりますが、日本国内では競技人口が少なく、あまり注目されていないかも知れないクリケットは、海外ではライブストリーミングx広告挿入 (SSAI) の先進事例とも言えますし、これから日本でライブストリーミングx広告というモデルが盛り上がっていく中では、参考にしてみる価値があるケースだと言えるのではないでしょうか。


※もちろんボクシングも、広告を収入源ともしていますが、Pay Per View (PPV)の売上げがダントツで大きいです。これは同じスポーツでも広告に向いているのか?PPVにも向いているのか?で分けられる、つまりコンテンツには属性があるということですね。ボクシングのVODはYouTubeでも見られますが、ライブは有料で、ライブの一瞬に価値があるコンテンツと言えるでしょう。

次にもう一つの成功例であるスーパーボウルについてご紹介したいと思います。

日本でもニュースとなるスーパーボウルは、全米アメリカンフットボールリーグ、NFLの王者を決める優勝決定戦ですね。試合前の国歌斉唱や、ハーフタイムショーでは、マイケル・ジャクソンやビヨンセなど、時代を代表するスーパースターたちがパフォーマンスを見せてきたことでも有名です。

その視聴率は約50%とも言われますが、ということは、米国の人口が約3.2億人(2017年)なので、単純計算で視聴者数は約1億6,000万人ということになります。また、600億円を超すとも言われるスーパーボウルの桁違いの経済効果については日本でも話題になりますが、中でもCM料はどのくらいかというと、2016年から2018年は30秒枠で500万ドル (100円計算で5億円!!)という調査結果があります。


スーパーボウルの人気ぶりが少し実感できたのではないでしょうか。では、インターネットで観戦する視聴者はどれくらいいるのでしょうか。

こちらは、2015年にアカマイの社員が書いているブログですが、公開されているトラフィック情報は、スーパーボウルのネット同時配信は、"1分あたりのViewer"は800,000人、同時接続数のピークは130万人"でした。

130万同時接続というのはなかなか大きいですね。

スーパーボウルは、クリケットよりも配信時間が短く、一瞬のライブのピークに価値があると言えますね。

アメフトの試合時間はだいたい3時間程度なので、一試合平均4-8時間とされるクリケットと比較するとスーパーボウルは短い時間で多くの人が見るという特性があるため、時間当たりの広告枠の密度が高いと言えます。

またスーパーボウルの広告挿入以外の強みはソーシャルネットワーク (SNS) 経由での拡散といわれています。視聴者が特定の時間帯に集中して視聴して、その感動をその場ですぐTwitterやFacebook、インスタグラムで共有するイメージです。

こういったSNSが活用されるライブストリーミングは、広告企業のブランド認知を向上させるという効果にも注目されているようです。

繰り返しになりますが、クリケットとスーパーボウル、この2つは無料ライブ配信でも大きなMonetizeが期待される注目のスポーツイベントです。インストリーミング広告の広告収入というのは公開していないものの、

"このくらいの規模のライブストリーミング"ができれば、マネタイズが期待できるという大まかな指標"は上述した公開情報から推測することができます。

 

クリケットとスーパーボウルの事例から学べることは

・同時接続数は100万人以上(スーパーボウル (2015年)が130万、クリケットが300万)

・ピークトラフィックは1Tbps以上

・視聴者数は2,500万以上

というのがネットライブ配信で広告モデルとして成立するための一つの参考指標と考えられるのではないでしょうか。

※ピークトラフィックというのは、同時接続数とビットレートによって上下しますが、ポイントとしては100万同時接続の場合、1Mbpsの動画で1Tbps程度は到達することになります。これは、CDNだけではなくエンコーダーなどの配信周りもこれくらいのトラフィック量に耐えられる仕様になっていないと、広告挿入でのチャンスロスになりかねないということですね。

この規模のライブストリーミングともなると、放送事故とか絶対起こせないわけです。

 

最後に、このような大規模ライブストリーミングを支えているアカマイの技術サービスのご紹介をさせてください。

 

①Broadcast Operations Control Center

参考記事:BROADCAST OPERATION CONTROL CENTER (BOCC)のご紹介

アカマイの新しいマネージドサービスの一つである、Broadcast Operations Control Center (BOCC)とは、インターネットでブロードキャスト(動画配信)をした場合に直面する様々な問題を解決する、専門家、ファシリティ、ツール、プロセスの総称となります。
アカマイがそのようなサービスを提供する背景として、ネット動画視聴者の期待値の高まり、それに対するネット動画サービス提供者側の配信クオリティへの要望の高まりがあります。

 BOCC.png

 

BOCCの日本での導入事例も既にいくつかあり、AbemaTVによる「72時間ホンネテレビ」の事例などが挙げられます。

 

②低遅延ライブストリーミング

参考記事:低遅延ライブ動画配信の実現

近年さまざまな動画コンテンツがインターネット上でライブ配信されていますが、例えば配信されている試合の映像が実際の進行より遅れていたり、誰かがSNSに投稿したコメントを見て結果を先に知ってしまったりして、配信に遅延が発生していることを感じたことはありませんでしょうか?

このブログ記事ではインターネットのライブ動画配信で遅延が起こる理由と、遅延を短くするためのアカマイの取り組みを紹介しています。

 ULL.png

③UDP/QUICを使用した高速化 

参考記事:UDP/QUICを使用した高速化 - AKAMAI MEDIA ACCELERATION

アカマイでは、ビデオのライブ配信、オンデマンド配信や、ゲームソフトなど大型のダウンロードファイルにおいて、UDPプロトコルを用いた通信をオプションとして選択できるように計画しています(一部実装済み)。 例えばライブ配信におけるビデオエンコーダーからアカマイへのUDP通信は、2015年に買収したOctoshape社の技術をベースにしたものを採用する予定ですが、Akamai Edge Serverからエンドユーザー間については、前述のQUICが既に幾つかのアカマイ製品で使用可能です。

QUIC.png

日本のライブストリーミングも年々盛り上がっていますね。今回は海外の参考例をお話しましたが、日本は世界をリードできる4G、5Gのインフラを持ち、また多くの先進的な取り組みを実践している国ですので、いつか海外の企業が日本をベンチマークする日が来ると思います。

我々もお客様の成功を影から支えるインターネットの黒子として技術を向上させていけるよう日々精進していきます!

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